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ここでは、ISOを新規認証取得しようと検討されている方に、「ISOは経営システムの基本である」 を解説したいと思います。
”経営管理”は”経営”と”管理”に分けて考えることができます。”経営”とは「企業の目的を達成する営みである」と要約することができます。そして、その企業の目的を効率良く達成するために営まれる行為が”管理”です。
企業の目的には、第一に「利潤の追求」が挙げられます。企業を興し、継続し続けるためには利潤の追求なくして成り立たないことから必然のことです。しかし、真の目的は何でしょうか。利潤の追求は事業継承の前提条件であって、決して究極の目的ではありません。真の目的は、社会的な目標を含めて、定款や経営理念、社是などに包括的に示されているはずです。
オーナー経営者であることが多い中小企業においては、自らの熱い思いを社是・社訓に託し、たいへん立派な経営理念を額に入れて掲示されていることをよく見かけます。しかし、いかに素晴らしい経営理念であっても、経営の目的となって、中展期目標がつくられ、年次計画、月次計画へと展開されていなければならないはずです。
ここで”管理”とは、「管理のP-D-C-Aサイクルを回すこと」です。経営理念をベースにして、経営環境を的確に分析して、経営目標を設定します。そして経営資源を最適に組み合わせて、経営活動を実行・統制し、成果を評価し、経営スキルをアップし、新たな経営目標を策定し続ける一連の活動のことです。
このように体系的な”経営管理”を現実の場で行なっている中小企業は、どの程度存在しているでしょうか。部分的には実行していても体系的に実施しているかとなると、極めて少ない数の企業しか行なっていないのではないかと思います。
経営管理力と品質管理力の組合わせで、次の2つのケースを考えてみましょう。
第1に「経営管理力は弱いが品質管理力は強い」会社の場合で考えられることは、ISO9001の取得は努力すれば可能であるが、経営者の意識を相当高めなければなりません。ただ、程度の差はあっても、品質管理のP-D-C-Aのサイクルを回すだけの力がすでに備わっていますので、相対的に経営管理が弱いと判断しているだけで、実は相当の経営管理力を有していると考えることもできます。
第2は、逆に「組織的な経営管理が行なわれているが品質管理力が弱い」企業はどうでしょうか。残念ながら、そのままでは受審することはできません。つまり、キーマンとなる品質保証責任者が実力を備えて機能していない組織では、ISO9001は受審資格要件が整っていないといえます。ISO9001では、品質管理責任者の権限と責任の明確化、文書管理の徹底、品質記録の必要性を唱えています。
それでは、なぜ品質管理力が弱いのでしょうか。自社オリジナル製品を開発、製造、自社販売している電子機器メーカーの会社の例では、これまで地位と肩書きのある品質保証責任者が存在していないことがその理由に挙げられます。
組織上の品質保証担当者は、製造部長の指揮下で実務を行なっており、全社的な品質管理はもとより、統計的な品質保証すら行なっていない。つまり、品質保証の実務者はいても管理者がいない。多くの中小企業に見受けられるケースです。
多くの中小企業では経営管理力、品質管理力のいずれも弱い、”管理”の概念すら乏しいのが実情です。このような企業ではISOを取得することをよい機会として、組織的に経営管理体制を構築しなければなりません。
QC(Quality Control=品質管理)は、一部の技術部門の活動領域からTQC(Total Quality Control=全社的品質管理)へと高まり、さらに拡大されたTQCは、TQM(Total Quality Management=総合品質経営)へと発展していきました。
品質管理で、TQCが必要な理由として@ 企業の体質改善としての役割を果たす、A 企業の長期的利益獲得に寄与する、B 製品の働きを通じて社会に貢献する、C 人間性尊重の手段としての役割をもつ、といった項目を挙げることができます。
TQCが果たす役割や必要性の概念は、経営全般に大きなウエイトを占めており、ヒト、モノ、カネ、技術、情報といった経営資源すべてを包含しており、今日的にはTQMという方が適切かもしれません。
TQCは総合的、包括的な概念であるということに対して、ISO9001は明示された項日を満たす能力について信頼感を付与するものであるといえます。この2つの大きな違いは、ISO9001が評価すべき対象が限定的であるのに対し、TQCは品質経営の目的を達成するために全社全員が参加するその企業なりの経営アプローチであり、必ずしも評価の基準は定められていないことです。
これまでの日本式TQCは、ISO9001 品質システムに負けず劣らず素晴らしいものであることは十分に認識しつつも、社会経済のグローバル化が進展している今日、TQCの枠内に閉じ込もっているわけにはいきません。世界がISO9001を受け入れているのですから、当然、時代の転換期として新しい経営システムを組み込むことが望ましいといえます。
ISO9001は、単なる品質保証システムと捕えるのは狭義の見方です。広義に解釈すれば「包括的な品質保証システムであり、品質経営保証システム」ということができます。
ここで品質経営とは、「品質すなわちユーザーの利益を優先することが、結果として自社の利益の増大に寄与する」という意味で、品質を重視する経営であることが分ります。ISO9001によって”経営”,”品質”,”管理”が有機的に結び付いているといえます。
「うちの会社は、人材が育っていない。将来の後継者が頼りなくバトンタッチが心配の種である」とおなげきの経営者にはISO9001認証取得を真剣に検討することをお勧めいたします。
なぜなら、ISO9001の勉強を通じて、経営者の役割を認識することができ、「組織的に部下を通じて目的を達成すべきである」ことが即座に理解できるからです。これこそマネジメントの原点であり、経営目標の策定、業務目標の達成、人材の育成、職場の活性化、経営上の問題解決など、会社の体質を強化する方向を見出すことができるからです。
欧米的なISO9001を日本的な経営に生かすため、優れたリーダーシップの発揮を期待しています。
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